Microsoft広告の中でも、検索広告の新たな可能性を切り開く「マルチメディア広告」。聞いたことはあるけど中身はご存じない方も多いのではないでしょうか。本記事では、従来のレスポンシブ広告とは異なる独自の仕組みを持つこの広告フォーマットについて、構造・メリット・設定方法・最適化戦略を体系的に解説します。
マルチメディア広告とは?検索広告の進化形
マルチメディア広告は、Microsoft広告の検索ネットワーク上で配信される広告フォーマットの一種です。ディスプレイ広告ではなく、あくまで検索広告に分類されます。
主な特徴
- 検索結果ページ右側に大きな画像付きで表示
- PCやタブレットでBing検索を行った際、検索結果の右側に1社のみが表示される専有枠。
- 高い視認性と専有性
- 他社広告と並ばず、ユーザーの視線を独占できるため、CTR(クリック率)の向上に直結。
- 独自のオークションシステム
- 通常の検索広告とは別枠でオークションが行われるため、同一検索結果ページに自社レスポンシブ広告とマルチメディア広告が同時に表示される可能性も。
このように、マルチメディア広告は「検索広告のビジュアル強化版」と言える存在です。
レスポンシブ広告との違い
| 比較項目 | マルチメディア広告 | レスポンシブ検索広告 |
|---|---|---|
| 配信面 | 検索結果ページ右側 | 検索結果の上部・下部 |
| 表示形式 | 画像+テキスト | テキストのみ |
| オークション | 独立したオークション | 通常の検索広告と同一 |
| 表示枠 | 1社のみ | 複数社が並列表示 |
この違いを理解することで、マルチメディア広告の戦略的な活用が可能になります。
入稿に必要なアセットと仕様
Microsoft公式ヘルプページでも詳しく紹介されていますが、以下のアセットが必要です。
必須アセット一覧
- 最終ページURL
- 会社名(25文字以内)
- 短い見出し(30文字以内、最大15個)
- 長い見出し(90文字以内、最大5個)
- 説明文(90文字以内、最大5個)
- 画像(最大16個)
- 行動喚起(CTA)
画像仕様
1.91: 1、1:1、1: 2、4 : 1 の 4 つの縦横比があり、1.91: 1、1:1は必須
- 横長(1.91:1):703×368px以上
- 正方形(1:1):470×470px以上
- 推奨:縦長(1:2)、超横長(4:1)も追加すると配信機会が広がる

マルチメディア広告では大きく表示される画像が大きな役割を果たしますので、貴社広告と関連性の高い画像を複数設定することが望ましいでしょう。
設定手順
- Microsoft広告管理画面にログイン
- キャンペーン・広告グループを選択
- 「広告の作成」→「マルチメディア広告」を選択
- 必須アセットをすべて入稿
- プレビュー確認後、保存して審査へ
※1広告グループにつき最大3件まで作成可能
広告と表示オプションから、既存レスポンシブ広告の左側にレ点をつけ、上部に表示される「編集」から、「レスポンシブ広告からマルチメディア広告にコピーする」を選択すると、既存レスポンシブ広告の見出し、説明文をそのまま流用して、画像を追加することで配信開始することができます。
最適化のポイント
CTR向上のための工夫
- 見出し15件、説明文5件、画像16件を可能な限り多くのアセットを設定する
- 1.91: 1、1:1、1: 2、4 : 1 の 4 つの縦横比で画像を設定して、パフォーマンスを分析する
- 各広告グループのキーワードに関連するマルチメディア広告を設定する
- 画像は明るい色合いを使用して、視覚訴求性を追求する
アセット評価の活用
Microsoft広告では、各アセットに「最良」「良い」「低い」などの評価が付与されます。これを活用してPDCAを回すことで、広告効果を継続的に改善できます。
1か月間のパフォーマンスモニタリングと入札単価調整
マルチメディア広告は、画像の訴求力や専有表示によって高いCTRが期待できますが、実際の成果は業種や検索キーワードによって異なります。そこで、配信開始から約1か月間はパフォーマンスを継続的にモニタリングすることが重要です。
モニタリング項目の例
- CTR(クリック率)
- CVR(コンバージョン率)
- CPA(顧客獲得単価)
- アセット評価(最良/良い/低い)
これらの指標が、既存のレスポンシブ広告と比較して良好な場合は、キャンペーン設定内の「マルチメディア広告の入札単価調整」項目を引き上げることで、さらなる配信機会の拡大が期待できます。
操作手順(管理画面)
- キャンペーン設定画面を開く
- 「広告グループの設定」→「広告の入札単価調整」へ進む
- 「マルチメディア広告」の項目を選択
- 初期設定(例:+0%)から、+20~40%程度に調整
- 変更後も週次でパフォーマンスを確認し、必要に応じて再調整
※入札単価調整は、広告表示機会に直接影響するため、慎重な判断が求められます。
マルチメディア広告の入札単価調整は当初+20%がデフォルト設定となっていますので、パフォーマンスが良い場合は40%程度にして改めてパフォーマンスをモニタリングしましょう。
活用シーンと戦略的意義
マルチメディア広告は、以下のような商材・ターゲットに特に有効です。
- BtoB商材(LinkedIn連携による精度高いターゲティング)
- 高単価商材(不動産・自動車など)
- PCユーザー中心の市場(企業決裁者層など)
Google広告ではリーチしづらいビジネスシーンのユーザー層に、強力なビジュアル訴求でアプローチできるのが最大の魅力です。
まとめ:本記事の重要ポイント
マルチメディア広告は、単なる「画像付き広告」ではなく、検索広告の可能性を広げる戦略的なフォーマットです。特に、Microsoft広告を活用する広告主・代理店にとっては、Google広告では得られない専有性と視認性を武器に、差別化を図る絶好のチャンスとなります。
下記に本記事での重要事項をまとめます。
- マルチメディア広告は検索広告の一種で、ディスプレイ広告ではない
- 検索結果ページ右側に画像付きで1社のみ表示される専有枠
- レスポンシブ広告とは異なる独自のオークションで配信
- 高い視認性と専有性によりCTR向上に貢献
- 入稿には画像・見出し・説明文など複数アセットが必要
- アセット評価を活用してPDCAを回すことで効果最大化
- BtoBや高単価商材に特に有効な戦略的フォーマット
本記事で紹介した内容をもとに、まずは1つの広告グループでテスト配信を行い、約1か月程度パフォーマンスをアセット評価やCTRの変化を観察しながら改善を重ねてみてください。画像の選定や見出しの構成次第で、成果は大きく変わります。
